|
16世紀の地図製作から「サイバーエリート」まで
フランダースは何世紀にもわたって、数々の世界的な先駆者を輩出してきました。その分野は、地図製作から解剖学、アスファルトからプラスチック、バイオテクノロジーからインターネットと多岐にわたります。ここでは、世界の舞台で活躍したフランダース人をご紹介します。
パティー・マース(Pattie Maes):「サイバーエリート」のひとり
パティー・マースはエージェント・ソフトというIT研究の分野で、パイオニアのひとりでした。マサチューセッツ工科大学メディア研究所の助教授を務めるマースは、1994年からは活動的なインターネット起業家として、ファイアフライ・ネットワーク(Firefly Network)をはじめ数社の設立に携わっています。マースはまた、世界経済フォーラムの「明日のグローバル・リーダー」に選ばれたほか、『Time Digital』誌では「サイバーエリート」(ハイテク産業のパイオニア50人)のひとりにも選ばれています。
キャサリン・バーファイリー(Catherine Verfaillie)博士:幹細胞研究
バーファイリー博士は幹細胞研究のパイオニアです。ミネソタ大学医学部教授(血液学・腫瘍学・臓器移植学)で、フランダースの幹細胞研究所長を務める博士の研究チームは、成人型多能性体性幹細胞(MAPC: Multipotent Adult Progenitor Cells)という特殊な幹細胞を発見しました。この幹細胞は、主な種類の組織・細胞のどれにでも発達できるという性質があります。バーファイリー博士は、ミネソタ大学との関係を保ちながら、現在フランダースのルーベン大学で幹細胞研究所の長を務めています。多くの賞を授与されたほか、『US News and World Report』誌によって「2001年のイノベーター10人」にも選ばれました。
ロバート・カイヨウ(Robert Cailliau):ワールドワイドウェブの開拓者
ロバート・カイヨウは、フランダースのトングレンに生まれました。1974年、カイヨウは世界最大の素粒子物理学研究施設であるCERN(欧州核研究センター)に入所します。1989年、彼とティム・バーナーズ・リー(Tim Berners-Lee)はCERNデータにアクセスするハイパーテキストの方式を個別に提案し、1990年には共同でWorldWideWebの仕組みを提案しました。そして1993年12月には、国際WWW会議の開催を呼びかけました。この会議は1994年に始まり、以来毎年行なわれています。カイヨウは、2005年にCERNを退所しています。
ピーター・ピオット(Peter Piot):国連エイズ・プログラム責任者
ルーベン生まれの医師・微生物学者であるピオット博士は1994年、国連エイズ計画の事務局長(Executive Director)兼国連事務総長補佐に任命されました。それまでは、世界保健機構(WHO)の世界エイズ計画で副事務局長を務めていました。博士は2001年ネルソン・マンデラ賞をはじめ多数の賞を授与され、全米国立科学アカデミーの会員にも選ばれています。
マルク・ファンモンタギュー(Marc Van Montagu)、ジェフ・シェル(Jeff Schell、1935-2003):
バイオテクノロジー研究
マルク・ファンモンタギューと故ジェフ・シェルの両教授は、細菌「Agrobacterium tumefaciens」のDNA導入技術を開発しました。この技術は現在、世界中で植物の遺伝子改良に利用されています。またこの技術は、植物バイオ企業として世界でも先駆けのひとつであるプラント・ジェネティック・システムズ(Plant Genetic Systems)社(現バイエル・バイオサイエンス(Bayer Bioscience)社)設立の道を開きました。両教授ともに、全米科学アカデミーの外国アソシエート会員です。
ポール・ヤンセン(Paul Janssen、1926-2003):新薬の発見
ポール・ヤンセン博士は1954年、独立研究企業であるヤンセン・ファーマスーティカ社を設立しました。同社は現在ジョンソン・エンド・ジョンソンの傘下にあります。ヤンセン博士は薬品について100件以上の特許を持ち、世界各地の大学から22個の名誉博士号を授与され、学会・専門団体の賞を70個以上獲得しています。
コルネイレ・ヘイマンス(Corneel Heymans、1892-1968):ノーベル医学生理学賞
フランダース出身の毒物学・薬理学者で、圧受容器、化学受容器、神経起源の高血圧症、コリンエストラーゼ・ブロッカー、ニコチン解毒剤、クラーレ・ミメティカ毒など独創的な研究で有名です。
レオ・ヘンドリック・ベークランド(Leo Hendrik Baekeland、1863-1944):プラスチックの父
ベークランドは、世界初の合成樹脂である「ベークライト」を発明しました。これはフェノール-ホルムアルデヒド樹脂の一種で、初期の電話機の素材にも使われていました。ベークランドの業績は多数の賞に輝き、米『タイム(TIME)』誌の「20世紀の偉大な思想家・学者20人」の中にも選ばれています。
エドワード・J・ドゥ・スメト(Edward J. de Smedt):現代アスファルトの発明
ドゥ・スメト教授はベルギーからアメリカに移住し、コロンビア大学での研究で、1870年道路舗装用アスファルトを発明しました。その2か月後には、世界初のシート・アスファルト舗装が、ニュージャージー州ニューアークのウィリアム通りに敷かれました。
アンドレアス・ヴェサリウス(Andreas Vesalius、1514-1564):近代解剖学の父
ブリュッセルに生まれたヴェサリウスは、人体の解剖と知見の解説を通じて、近代解剖学の基礎を築きました。その主著『De Humani Corporis Fabrica(人体解剖学)』は、科学的な正確さがあると言える史上初の解剖教科書でした。
ゲラルドゥス・メルカトル(Gerardus Mercator、1512-1594):地図図法
メルカトルはフランダースの数学者・地理学者・地図製作者で、1538年に初めて自製の地図を発表しました。独自の図法(メルカトル図法)を使った最初の地図は、1569年に発表され、航海用の海図には現在もいちばんよく使われています。また別のフランダースの地理学者、アブラハム・オルテリウス(Abraham Ortelius)は1570年に最初の近代的な世界地図を作りました。
|